director's voice

田中遼馬さん(陶芸)

Q1
田中遼馬さんは、「工房からの風」にどのような作品を出品くださいますか?
その中で、特に見ていただきたいものがありましたら、加えて教えてください。

A1
陶器の普段使いのうつわがメインで、
色化粧土を削って模様を出す掻き落としという技法を使っています。
動物や果物を模様化して、
シンプルながら何か物語が見えるような器になればいいなと思いながら作っています。
(例えば動物柄にも目は描かずに想像の余地を作るようになど)

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シロクマやペンギン、キツネやウサギなどの形の豆皿・小皿では
テーブルの上で物語を作れるようなうつわになるのかなと思うので、
特にみていただけると嬉しいです。

「工房からの風」では、新しく海の動物のシリーズも
作ってみたいと思っているのでそちらぜひ。

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一見愛らしい器でありながら、心地よい距離感のようなものを有している田中さんの器。
作者の想いが映った姿なのですね。

Q2
工房でよく聴く音楽、
または、ものづくりを進める中で大切にしている本、
あるいは、心の中で大切にしている映画、いずれかを教えてくださいますか?

A2
心の中で大切にしている本になるのですが、
鈴木三重吉の『桑の実』という小説です。
明治末から大正の頃の東京を舞台に、
とくに劇的な展開があるわけでもなく、
ただ心地の良い空気感の流れる小説です。

ただ、その空気感を作るために、
こまごまとみずみずしい自然の描写や
登場人物たちの端々にまで気を配った言葉使いなどがきちんと支えていて、
とても丁寧に描かれた小説だと感じています。

自分もものづくりをする上で、
こんなさらっとした心地よい空気感が感じられるようにしたいといつも思っています。
そのためにどこに気をつけて作っていくのか、常に考えるようにしています。

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工藝品には風合い、というものがあって、
それを特に愛する人たちがいるように思います。
小説にも起承転結、ストーリーだけではなく、描写の積み重ねの中に、
文章ならではの風合いがあって、それを味わうことも、
小説読みの醍醐味なのではないでしょうか。
田中さんの読書のお話し、もっとお聞きしてみたいですね。

Q3
草や木で作られたもの(工芸品に限らず)で、
大切にしているものや、思い出に残るものをひとつ教えてください。

A3
工房では半分をお店のようにして使っているのですが、
そこの棚には古道具の棚や机をつかっています。
工房に入るときにどこか古くなった木の甘いような匂いがして
とても気に入っています。

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田中さんの工房名は「苔色工房」。
今年の隠し?テーマの一草一木にも通じる工房名ですね。
古くなった木の匂いや、苔の色など、
草や木の香りが田中さんの工房にはきっと満ちているのでしょう。

田中遼馬さんの出展場所は、コルトン広場
スペイン階段前。
本八幡側から入ってすぐのところ。
(ガラスの栗原志歩さんのお隣です)

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